
~海苔を切る手に込めた、ママたちの小さな愛情物語~
子どもが幼稚園や保育園に通い始めると、一度は挑戦することになるのが「キャラ弁」ではないでしょうか。
好きな動物や人気のキャラクターが入ったお弁当は、子どもたちにとって特別なものです。お弁当箱を開けた瞬間の嬉しそうな顔を想像しながら、朝早くからキッチンに立つお母さんも多いと思います。
しかし、実際に作ってみると多くの人が同じことを感じます。
「中身を作るより、キャラクターを作る時間の方が長い。」
これはキャラ弁作りを経験した人なら、きっと大きくうなずいてくれる「あるある」ではないでしょうか。
おかず作りより大変なのは最後の仕上げ
卵焼きを焼いて、ウインナーを炒めて、ブロッコリーを茹でて、ご飯を詰める。
ここまで来れば普通のお弁当ならほぼ完成です。
ところがキャラ弁の場合、本当の勝負はここから始まります。
海苔を細かく切って目を作る。
チーズを小さく切り抜いて白目を作る。
ハムやカニカマでほっぺを作る。
ピンセットを使いながら慎重に配置していく作業は、もはや料理というより工作やアート制作に近いかもしれません。
しかも不思議なことに、一番時間がかかる部分ほど驚くほど小さいのです。
数ミリの目を作るために何度も海苔を切り直し、口の角度を少し変えるだけで表情が大きく変わるため、納得がいくまで微調整を繰り返します。
ほんの数センチのパーツを完成させるために、10分、20分と時間が過ぎていくことも珍しくありません。
朝のキッチンは時間との戦い
キャラ弁作りが大変なのは、その作業を行うのが「朝」だからです。
子どもを起こして朝食を準備し、自分の支度もしなければならない。
洗濯機を回しながら学校や幼稚園の準備を確認し、忘れ物がないかチェックする。
そんな慌ただしい朝の時間の中で、海苔を細かく切り抜いている自分にふと笑ってしまうことがあります。
時計を見るたびに焦りは増していきます。
「あと10分で出発。」
「まだ顔が完成していない。」
「このままだと目が片方しかない。」
そんな小さなパニックを経験したお母さんも少なくないはずです。
最終的には予定していた髪飾りを諦めたり、ほっぺのチークを省略したりして、なんとか完成にこぎつけることもあります。
それでも完成したお弁当を見ると、不思議と達成感が湧いてくるものです。
食べる時間はあっという間
苦労して作ったキャラ弁ですが、食べる時間は驚くほど短いものです。
朝に30分かけて作ったキャラクターも、お昼にはお腹の中へ。
ときには海苔が湿気で少し縮んでしまったり、運んでいる間に目がずれてしまったりすることもあります。
さらに帰宅した子どもに感想を聞いてみると、
「おいしかった!」「全部食べたよ!」
という嬉しい報告はあるものの、苦労した細かい部分については特に触れられないことも珍しくありません。
せっかく時間をかけて作ったまつ毛や表情、こだわって作った細かなパーツに気づいてもらえなかったときは、少しだけ寂しい気持ちになることもあります。
しかし、それでいいのかもしれません。
子どもたちにとって大切なのは、細かな技術や完成度ではなく、お弁当箱を開けた瞬間の嬉しい気持ちだからです。
好きなキャラクターが自分を待っていてくれる。
それだけでお昼の時間が少し特別なものになります。
「わあ!」の一言がすべてを報われるものにする
キャラ弁を作る最大の原動力は、やはり子どもの笑顔です。
お弁当箱を開けた瞬間に驚いた顔をしたこと。
友達に見せて嬉しそうにしていたこと。
帰宅してから「明日も作ってほしい」と言ってくれたこと。
そんな小さな出来事が、次のお弁当作りのエネルギーになります。
もちろん毎日続ける必要はありません。
忙しい日は冷凍食品に頼ってもいいですし、シンプルなお弁当の日があってもいい。
毎日完璧を目指していたら、お母さんの方が先に疲れてしまいます。
キャラ弁は義務ではなく、作りたいと思った日に楽しむもの。
そう考えるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
大人になって思い出すのは味より気持ち
子どもが大人になったとき、お弁当の中に何が入っていたかを細かく覚えている人は多くありません。
何曜日に何のおかずが入っていたかを正確に覚えている人は、ほとんどいないでしょう。
それでも、不思議と「お母さんがお弁当を作ってくれていた」という記憶は残っています。
運動会の日のお弁当。
遠足の日の特別なお弁当。
好きなキャラクターが入っていて嬉しかった日のこと。
そうした記憶は、料理そのものよりも「誰かが自分のために時間を使ってくれた」という温かい気持ちと一緒に心に残っていくものです。
キャラ弁にかかった30分は、ただの30分ではありません。
それは子どもの笑顔を思い浮かべながら過ごした30分であり、愛情を形にするための30分でもあります。
今日も全国のキッチンで小さな芸術作品が生まれている
今この瞬間も、全国のどこかのキッチンでは海苔を慎重に切っているお母さんがいます。
左右の目の大きさが揃わずに悩んでいる人もいるでしょう。
予定していたデザインを諦めて簡略版に変更している人もいるかもしれません。
それでも完成したお弁当を見て、小さく満足そうにうなずく。
そんな光景が、日本中の朝のキッチンで繰り返されています。
キャラ弁のキャラ作りは、中身を詰めるより時間がかかる。
一見するととても非効率です。
それでも、その時間を惜しまない理由があります。
子どもが笑ってくれるから。喜んでくれるから。
そして何より、その笑顔を見ることが、お母さん自身の幸せにもつながっているからです。
今日もまた、小さなお弁当箱の中には、おかずだけではなく、たくさんの愛情と少しのこだわり、そしてたくさんの「喜んでほしい」という気持ちがぎゅっと詰め込まれているのです。
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